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鷺と雪

鷺と雪


北村薫さんのベッキーさんシリーズ3作目であり、直木賞受賞作品です。

田舎の図書館でもさすがに予約を入れないと借りることができませんでした。

3章に分かれていて、「不在の父」では

突然いなくなった男爵が下町で見かけられるという事件が取り上げられています。

この中にでてくる山村暮鳥の詩集読みたいなと思います。

そして、この作品を読んでまず私の頭によぎったのは、「セツルメント運動」です。

セツルメント運動とは、知識や人格の優れた人がスラムに住み、

住民といっしょに生活して環境改善し、生活を改善していこうという運動で、

日本ではキリスト教の精神に基づいた片山潜のキングスレー館が最初です。

山村暮鳥が牧師であったこと、

それも独自の解釈ゆえに時として異端と非難されたことなど、

からみあわせてあるのかなと思います。

それと、浅草、上野といったところが出てきて先日行ってきたばかりだったので、

イメージできてこれもなにかの縁かと錯覚いたしました。

時代は身分制度の残る昭和初期、民衆は貧困にあえぎ、凶作に見舞われる。

表題の鷺は、能の「鷺」を意味していて、能の中で鷺は帝の勅令を受けてとどまり舞う。

雪を思わせる鷺は、昭和11年2月26日の日の前兆のように使われている。

参考文献が列挙してあるのを見ても、北村氏の緻密な構想と意欲が感じられます。

この巻だけでも楽しめますが、やはり全シリーズ読まれるのがベストでしょう。

作中で、ベッキーさんの命名の秘密が明かされますし、

「ベッキーさんて、本当に何でもできるのね」といわれて、

「いえ、別宮には何もできないのです

「前を行く者は多くの場合―慚愧(ざんき)の念と共に、

その思いを噛み締めるのかも知れません。

そして、次に昇る日の、美しからんことを望むものかも」と続けます。

時代を変えた人が評価されるのは、ずっとあとの時代ですし、

その時の人たちは、そう思って逝ったのかもしれませんね。

鷺と雪

著者:北村 薫

鷺と雪

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